
企業の業務効率化や顧客対応の品質向上に欠かせない技術として「CTI(Computer Telephony Integration)」が活用されています。近年はCTIを単体で使うだけでなく、各種機能やツールと連携させ、より効率的に使いこなす手法に注目が集まっています。
2025年においては、CTI技術との連携により業務システムの再構築が一層進化するなど、企業の競争力を大きく左右する要素となっています。
本記事では、CTI連携の基本的な仕組みや連携のメリットまで幅広く解説します。
「CTI連携って聞いたことはあるけど、実際どんなシステムと連携させるの?」
「連携しながらCTIを使いたいが成功のポイントを知りたい」
という方も、本記事を読めば、自社に最適なCTI連携を進める視点が得られるはずです。
CTI連携とは

CTI連携とは、電話システムとコンピュータシステムを連動させる技術、および取り組みを指す言葉です。CTIはコンピュータと電話システムを連携させる技術ですが、CTI連携ではさらに別の管理システムと連携させることで業務効率化や情報の一元管理を狙います。
CTIと連携させる主なシステムとして、「CRM」「SFA」「PBX」が挙げられます。以下で連携によってできることをチェックしてみましょう。
CRM/SFAとの連携
CTIは、CRM(顧客関係管理システム)とSFA(営業支援システム)と連携できます。いずれも営業や顧客対応に関わる業務を支援するCRMですが、CRMはシステム全体を総括する用語であるのに対し、SFAは特に営業支援の機能が豊富なCRMを指すのが特徴です。
連携対象 | 主なメリット | 詳細説明 |
---|---|---|
CTI × CRM | 顧客対応の質向上 | 着信時に顧客情報を自動表示し、迅速かつ的確な応対ができる。 |
応対履歴の一元管理 | 通話内容や対応履歴をCRMに自動記録し、情報共有や引き継ぎがスムーズになる。 | |
顧客満足度の向上 | 担当者が変わっても一貫した対応が可能になり、信頼性向上に貢献する。 | |
CTI × SFA | 営業活動の効率化 | 通話内容や商談履歴をSFAに連携することで、営業プロセスの見える化が進む。 |
営業戦略の精度向上 | コールデータをもとに営業成果や課題を分析し、的確なアプローチができる。 | |
フォローアップの自動化 | 架電結果をSFAに自動記録、次回アクションやリマインドを自動設定できる。 |
CTIとCRM・SFAの連携は単なる電話応対の効率化にとどまらず、顧客理解の深化と顧客体験の向上を実現します。手間のかかる入力作業を削減しながら業務のPDCAサイクルを回せるようになり、コア業務に集中できるのもメリットです。
PBXとの連携
CTIとCRM(構内電話交換機)の連携は、電話環境における通信の効率化・自動化・可視化に貢献します。主に、以下が実現するのがポイントです。
- 着信時の自動ポップアップ表示
PBX経由での着信時に、CTIを通じて顧客情報や通話履歴が画面に自動表示される - 通話の自動録音・保存
通話内容を自動で録音し、顧客情報や案件と紐づけて保存する。 - 内線・外線の統合管理
内線や外線の通話履歴を一元的にCTI側で管理し、全通話のトラッキングをする。 - 通話のリアルタイムモニタリング
管理者が通話状況をリアルタイムで把握し、対応品質の監視や新人オペレーターのフォローに活用する。 - IVR(自動音声応答)との連携
PBXのIVR機能とCTIを組み合わせ、顧客を適切な部署へ自動振り分ける。
電話業務を、単なる通話手段から「業務改善のためのツール」としてステップアップさせられます。コールセンターやサポート窓口など電話対応件数の多い部門で連携すると、さらに効果を実感できるでしょう。
CTI連携の仕組み

CTI連携は、PBXなどの電話システムとCRMやSFAなどのコンピューターシステムを接続し、双方向で情報をやり取りできる環境にすることで実現します。
CTI連携の基本的な仕組みは、以下の通りです。
- 電話が発信・着信される
PBXやクラウドPBXを通じて通話がスタートする。 - CTIシステムが通話イベントを検知
誰がどこからかけてきたか、どの番号にかかったかなどの情報をリアルタイムに取得する。 - 連携先のシステム(CRMやSFAなど)へ情報を送信
CTIが、通話情報をAPIや専用のコネクタを通じて連携先システムにデータを転送する。 - 該当する顧客情報や案件データを自動で表示
着信と同時に担当者のPC画面に顧客の名前・履歴・対応内容がポップアップ表示される。 - 通話記録・対応履歴を自動保存
通話終了後、履歴がCRMやSFAに自動保存されて後から確認・分析できる。
CTI連携により、電話が終わった後で個別に会話内容を手入力で記録したり、名寄せ検索して顧客名を探したりする手間がなくなります。通話の履歴・録音・応対状況もシームレスに確認できるため、情報共有の基盤として活用してもよいでしょう。
また、近年はDB(データベース)連携だけでなく、API連携も進んでいます。
API連携はスピード・正確性・保守性に優れた手段として注目されており、2025年現在はAPI連携をする企業が増えました。各システムが公開するAPI仕様に基づいて接続を行うためセキュリティレベルも高く、システム変更やバージョンアップにも柔軟に対応できるのがポイントです。
CTI連携で得られるメリット

CTI連携で得られるメリットは多く、単なるシステム接続だけに留まらない効果を実感できます。業務フローの見直しや顧客体験の向上を実現するソリューションにもなるので、以下のメリットをチェックしてみましょう。
顧客対応のスピードと精度が上がる
CTI連携の大きなメリットとして、顧客対応のスピードと精度の向上することが挙げられます。
例えば、電話の着信と同時に顧客情報や過去の対応履歴が画面に自動表示されることで、オペレーターや営業担当は即座に顧客の状況を把握できます。名前、企業名、案件状況、過去のやり取りなどが全て可視化されるので、前回の話を引き継いで対応できるのがポイント。過去のクレーム履歴などもわかり、慎重な対応から積極的な営業提案まで、対応の手法を即座に決められることもメリットです。
結果として、顧客は「この会社は自分のことを理解してくれている」と感じやすくなり、顧客満足度の向上にも貢献します。ロイヤルティ向上やファン育成につなげたいときにも、CTI連携が効果的です。
業務の自動化と効率化が実現する
CTI連携を導入することで電話対応に関わる業務が自動化され、作業効率が向上します。これまで人の手で行っていた作業をシステムが担うことで、入力ミスや対応漏れといったヒューマンエラーを削減することも可能です。
結果的に、オペレーターや営業担当者は本来集中すべき「対応の質」や「提案活動」に時間を使えます。業務フローが標準化されることで新人教育の負担も軽減され、組織全体の生産性向上にもつながるのもポイントです。
CTI連携は単なる便利機能ではなく、業務改革や働き方改革を支える基盤技術として大きな価値を発揮しているのです。
対応履歴の一元管理ができる
CTI連携を活用することで、すべての通話履歴や対応内容を顧客情報と紐づけて管理できます。社内に顧客情報が点在してバラバラになったり、部門ごとに所有している情報が異なっていたりするストレスもありません。部門をまたいだ情報共有や引き継ぎにも便利で、特にトラブル対応などがスムーズになります。
一元管理された履歴は、「誰が・いつ・どのように対応したか」を明確に可視化するのもポイントです。過去のやり取りを基にパーソナライズされた提案や対応もできるので、営業のクオリティを上げるために課長してもよいでしょう。
マネジメント・品質管理の強化につながる
CTI連携を導入することで電話対応のデータが詳細かつ正確に記録・蓄積されるため、マネジメントや品質管理の強化にも便利です。
例えば、システムに保存された通話記録や録音データを参考に、従業員のトレーニングに活用できます。応対品質の評価や課題抽出に活用したり、新入社員の研修に使ったりできるのもポイント。また、クレーム対応の担当者を途中で交代するときも、スムーズに話の内容を引き継ぐなど細かなメリットも多いです。
また、通話件数・平均対応時間・保留時間・応答率などの指標がダッシュボード上で自動集計されるので、人事評価に活用することも可能です。ベストプラクティスとなる応対例を共有し、理想的な結果を出している従業員を表彰するなど工夫すれば、社内のモチベーションアップにも効果的です。
CTI連携の課題と解決策

CTI連携はメリットが多い一方で、根強い課題があることも事実です。課題や対策すべきポイントを見落とすと、本来期待していた連携効果が現れなくなるので注意しましょう。
課題 | 解決策 |
---|---|
システム連携が複雑 | 専門家に依頼し仕様を明確にする |
データの同期や整合性を維持する必要がある | API連携でリアルタイム同期を行う |
ユーザーの操作習熟が不足しやすい | 使いやすいUIと研修・マニュアルの整備 |
セキュリティリスクへの配慮が必須 | アクセス制限や暗号化で安全対策を徹底 |
ここでは、それぞれの課題と解決策について解説します。
システム連携が複雑
CTIとCRM・SFA・PBXなど他のシステムを連携する場合、システム間での互換性や通信方法が異なるため、連携の設計や実装が複雑になる可能性があります。もともとICTツールの扱いになれていないと、想像以上の複雑さに導入までの時間が長くなるかもしれません。
解決策
- 仕様の明確化と事前調査
連携するシステム間のデータフローや必要な情報を事前に明確にし、どのAPIやインターフェースを使うかを慎重に選定します。 - 専門家による設計
経験豊富なシステムインテグレーターやエンジニアに依頼し、最適な連携方法を設計・実装します。 - ミドルウェア活用
複数システムの連携を容易にするミドルウェアや統合ツールを活用し、複雑さを軽減します。
特に手軽な解決策は、専門家に依頼して仕様を明確にすることです。経験豊富なシステムインテグレーターやエンジニアに頼れば、CTI連携までのステップややるべきことも可視化してもらえます。
データの同期や整合性を維持する必要がある
データの同期と整合性がとれていないと、せっかくCTI連携してもリアルタイムでの情報共有ができません。異なるシステム間でデータが不一致になると、誤った情報に基づいた対応や意思決定が行われる恐れがあるため注意が必要です。
解決策
- リアルタイム同期の実施
APIやミドルウェアを利用してデータをリアルタイムで同期させることで、常に最新の情報になるよう維持します。 - 定期的なデータチェックと監査
システム間で定期的にデータの整合性をチェックし、異常が発見された場合は自動アラートを設定して対処します。 - エラーハンドリング機能の実装
データの不一致や同期エラーが発生した場合に、エラー処理を自動化して手動での修正を最小限に抑えます。
API連携でリアルタイム同期を行えれば、異なる業務システム間でのデータ共有もシームレスになります。情報のタイムラグや整合性の問題もなくなり、「どれが最新の情報なのか」と悩むこともありません。
ユーザーの操作習熟が不足しやすい
CTI連携で多くの操作が自動化されますが、現場で働く従業員やユーザーが新しい操作を覚えておく必要があります。慣れていないCTIシステムの操作方法に不安を感じた場合、「前の方がよかった」「結局使いにくいシステムばかり」と不評を集めるかもしれません。
解決策
- 直感的で使いやすいUI設計
ユーザーインターフェース(UI)の設計をシンプルで直感的にすることで、従業員がスムーズに操作を習得できるようにします。 - 段階的なトレーニングの実施
システムを習得しやすいよう、段階的なトレーニングプログラムを提供します。 - オンラインヘルプとマニュアルの整備
システム内にヘルプ機能やFAQ(よくある質問)を組み込み、リアルタイムでサポートが受けられるようにします。 - 定期的なフィードバックとサポート
定期的にユーザーからフィードバックを収集し、システムの使用感や改善点を把握してサポートを強化します。
操作習熟が不足しやすいという課題は、適切なトレーニングとサポートを提供することで解消できます。シンプルで直感的なUIと段階的な教育プログラムを導入し、従業員が自信を持ってCTIシステムを操作できるよう工夫しましょう。
セキュリティリスクへの配慮が必須
CTIでは顧客情報や通話内容などの機密データを取り扱うため、セキュリティリスクは避けて通れません。データ漏えい・不正アクセス・ハッキングなどを受けて情報が流出すると、大きな被害や社会的信用の損失につながるので注意しましょう。
解決策
- データ暗号化
AES(などの強力な暗号化アルゴリズムを使用することが推奨されます。 - 多要素認証(MFA)の導入
多要素認証(MFA)を導入することで認証プロセスを強化します。 - アクセス制限と権限管理
役職や業務に応じた権限を設定し、必要最低限のアクセス権のみを与える「最小権限の原則」を徹底します。 - 定期的なセキュリティ監査と脆弱性テスト
定期的にシステムのセキュリティ監査を行い、セキュリティの脆弱性を検出します。 - ログ監視とアラート設定
システム内での不審なアクセスや異常な挙動をリアルタイムで監視し、異常が検出された際にアラートを出します。
データ暗号化・MFA・アクセス制限などを適切に実施することで、機密情報の漏えいや不正アクセスを防ぎましょう。セキュリティの強化は単なる対策ではなく、企業の長期的な成長と安定的な運営を支える基盤となります。
CTI連携を成功させるポイント

CTI連携を成功させるには、以下のポイントをおさえている必要があります。
ポイント | 説明 |
---|---|
事前の計画と設計 | システム連携の目的と要件を明確にし、関係者全員で詳細な計画を立てる。 |
システム間の互換性チェック | 既存のシステムとの互換性を確認し、APIやミドルウェアを選定してスムーズな連携を確保する。 |
ユーザー教育とサポート体制の整備 | 操作マニュアルや研修を提供し、ユーザーがCTIシステムをスムーズに操作できるよう支援する。 |
セキュリティ対策の強化 | データ暗号化やアクセス制限、多要素認証を導入してセキュリティリスクを下げる。 |
データ同期と整合性の管理 | リアルタイムでのデータ同期と整合性チェックを行い、常に正確なデータを維持する。 |
モニタリングとフィードバック | システムのパフォーマンスを定期的にモニタリングし、ユーザーからのフィードバックを反映する。 |
CTI連携を成功させるためには、まず計画と設計をしっかり行い、導入目的や要件を明確にすることが欠かせません。次に既存システムとの互換性を確認し、スムーズなデータ連携が可能かしっかり調査しましょう。ユーザー教育やセキュリティ対策にも配慮しておけば、業務の効率化や顧客対応の精度向上を実現し、長期的な成功を収められます。
反対に、上記のポイントが抜け落ちるとCTI連携は失敗しやすいので注意が必要です。思わぬトラブルを防ぎ、理想的なCTI連携にすることがポイントです。
まとめ
CTIは、電話業務の効率化や顧客対応の質向上に欠かせないツールとして確立しました。特に、以下のような企業課題がある場合CTI連携が解決策になるかもしれません。
【CTIが解決する課題】
- 電話業務の非効率
- 顧客対応の属人化
- 顧客情報のバラバラ管理
- 機会損失の防止
- リモートワーク時の電話管理
まずは、自社の課題やニーズに適したCTIシステムを選定し、導入を進めることが重要です。業務の効率化や顧客満足度の向上につなげて、理想的なCTI活用にしていきましょう。
■関連記事
Salesforce CTI連携 I Salesforce連携できるCTIシステム一覧
kintone CTI連携記事