目次
DeepSeekとは?
今、AI業界で最も注目されているのがDeepSeekです。革新的な低コストとオープンソース戦略により、一躍話題となったこのモデルは、開発者や研究者に新たな可能性を提供する一方で、データの透明性や知的財産の問題など、さまざまな議論を巻き起こしています。高性能でありながらコストを抑えたこのAIは、競争の激しい市場にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目されています。
DeepSeekは、最新のAI技術を活用したマルチモーダル大規模言語モデル(LLM)であり、画像、テキスト、コードなど多様なデータを解析・生成できることが特徴です。オープンソース戦略を採用し、多くの開発者や研究者がその技術を活用できる環境を提供しています。
開発背景
DeepSeekは、中国のクオンツヘッジファンド「High-Flyer」からの出資を受け、開発されました。同社の生成AI開発チームは、北京大学や清華大学などのトップ大学出身の若手研究者で構成されており、最先端の技術革新に取り組んでいます。
また、DeepSeekは従来の大規模AIモデルに比べて、中国国内で取得可能な半導体チップに制限があったため、Multi-head Latent Attention(MLA) や Mixture-of-Experts(MoE) などの技術を活用し、トレーニングに必要な計算資源を大幅に削減しています。
- Multi-head Latent Attention(MLA):複数の注意機構を活用することで、モデルが異なる情報に焦点を当てながら学習し、より高度なパターン認識を実現する技術。
- Mixture-of-Experts(MoE):モデル内で複数の専門家ネットワークを組み合わせ、タスクごとに最適なネットワークを選択しながら処理することで、計算効率を向上させるアーキテクチャ。
DeepSeekの特徴
1. 安価で高性能
オープンソースとして提供されることで、商業モデルと比較して導入コストを抑えつつ、高性能なAIを活用できる点が魅力です。
DeepSeekのAPI使用料は以下になります。なんと、OpenAI o1モデルの27分の1のコストで使用することができます。また、DeepSeek自体の使用料は、無料になります。
モデル | 入力コスト(100万トークンあたり) | 出力コスト(100万トークンあたり) |
---|---|---|
DeepSeek R1 | $0.55 | $2.19 |
OpenAI o1 | $15.00 | $60.00 |
Claude Sonnet 3.5 | $3.00 | $15.00 |
また、性能についての検証として、実際に、生成AIの能力を試す問題で有名な「マラソン問題」を解かせてみました。その結果は、以下の画像(1枚目、2枚目)の内容になります。かなり、熟考した様子が伺えます。
同様に、同等の能力があるとされるChatGPTのo1モデルに対して、聞いた結果は以下(画像3枚目、4枚目)になります。
2. マルチモーダル対応
DeepSeekは、テキスト処理だけでなく、画像認識・生成、コード解析などにも対応可能なマルチモーダルAIです。これにより、より多様な業界やユースケースへの適用が期待されています。
3. 高度なカスタマイズ性
開発者向けにAPIが提供されており、独自データの学習や用途に応じた微調整が可能です。業界ごとの特定の課題に対して、適用しやすい設計となっています。
DeepSeekショックとは?
その反面で、DeepSeekの登場は「DeepSeekショック」とも呼ばれ、市場に大きな衝撃を与えました。このAIモデルの圧倒的な低コストと高性能が、既存のAIプラットフォームの価格設定やビジネスモデルに直接影響を及ぼしているためです。
特に、OpenAIやGoogle、Anthropicなどの既存の大手プレイヤーにとって、DeepSeekの台頭は新たな競争環境の到来を意味します。従来のAIモデルは高額なAPI利用料金を設定していたのに対し、DeepSeekはオープンソースとして公開され、無料または低コストで利用できるため、企業や研究機関が商用AIの選択肢を見直す動きが加速しています。
また、一部の技術者や投資家の間では、DeepSeekの戦略がAI市場全体に与える影響を「ディスラプティブ(破壊的)」と捉える意見もあり、今後の業界動向に注目が集まっています。
さらに、DeepSeekの登場は金融市場にも影響を与え、特にNVIDIA社やマイクロソフト社などハイテク株の下落を引き起こしました。DeepSeekが提供する低コストのオープンソースモデルにより、従来のAI企業の優位性が揺らぐとの懸念が広がり、投資家の間でAI関連株の評価が変動しました。これにより、AI企業を中心としたナスダック市場の一部銘柄が急落し、業界全体の再評価が進んでいます。
DeepSeekにまつわる懸念点
1. データの透明性に関する懸念
DeepSeekはオープンソースであるものの、学習データの詳細については完全には公開されていません。一部の開発者コミュニティからは、データソースの不透明性を指摘する声もあります。
2. ChatGPTモデルの蒸留疑惑
DeepSeekがChatGPT(OpenAIのGPTモデル)を蒸留しているのではないかという批判が存在します。蒸留とは、ある大規模モデルの知識を圧縮し、別のモデルへ転移させる技術です。DeepSeekがOpenAIのGPTモデルを意図的に蒸留している場合、倫理的・法的な問題が生じる可能性があります。特に、学習データが不明瞭である点も、この疑惑を深める要因となっています。この点について、今後の情報開示が求められます。
3. ニュースや情報に関する問いかけに対する正答率がわずか17%
ニュースガード(NewsGuard)による検証の結果、DeepSeekのチャットボットはニュースや情報に関する問いかけに対して、正答率がわずか17%であることが判明しました。 この調査では、DeepSeekのチャットボットがニュース関連のプロンプトに対して、30%の確率で誤った主張を繰り返し、53%の確率で曖昧または役に立たない回答を提供しており、全体として83%の失敗率となっています。
この結果は、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなどの競合他社と比較しても劣っており、DeepSeekの技術の信頼性に疑問を投げかけています。
まとめ
DeepSeekの登場は、AI市場に革命をもたらし、競争を激化させることで、AIの発展を加速させる契機になりました。まだ技術に対する懸念点も多いですが、従来の高コストなAIサービスのあり方を大きく変え、より多くの開発者や企業がAI技術を活用できる機会が増えていくでしょう。
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