2024.07.12
生成AI

【特集】ChatGPT Enterpriseとは?Teamとの比較や導入事例を紹介

はじめに

「ChatGPTを会社に導入したいが、セキュリティ面が不安。」といった懸念を抱えている大企業は多いのではないでしょうか。セキュリティの課題を解決し、会社での使用に特化したのがChatGPT Enterpriseです。2023年8月に販売開始され、既に多くのグローバル企業が活用しております。今回は、ChatGPT Enterprise の特徴や導入事例まで解説していきます。

ChatGPTとは

ChatGPTはOpenAIが提供する自然言語処理技術(LLM)を搭載した生成AIです。ChatGPTについて、以下の記事で詳しく解説しております。

ChatGPT Enterprise とは

ChatGPT Enterprise は、OpenAIが提供する高度な自然言語処理技術を搭載したビジネス向けのAIツールです。企業の特定のニーズに対応するためにカスタマイズされており、データのセキュリティとプライバシー保護にも特化しています。ChatGPTは、自然言語処理の分野で急速に進化してきました。初期のバージョンでは単純な会話や質問応答に対応していましたが、技術の進歩に伴い、より複雑なタスクやビジネスプロセスを処理できるようになりました。この進化の過程で、企業のニーズに応じた高度なカスタマイズやセキュリティ機能が求められるようになり、エンタープライズ向けバージョンであるChatGPT Enterpriseが開発されました。ChatGPT Enterprise は、企業がAIを活用して業務効率を向上させ、顧客サービスを強化し、コスト削減を実現するための強力なツールとして設計されています。

ChatGPT Enterprise の特徴

  1. 高度な自然言語処理

ChatGPT Enterpriseは、ChatGPT-4oなどのOpenAIの最先端のLLM技術を活用しています。この技術は、テキストの理解と生成において非常に高い精度を誇り、複雑な問い合わせや指示にも対応可能です。これにより、ビジネス文書の作成、データ解析、カスタマーサポートなど、さまざまな業務において効率的にAIを活用することができます。

  1. カスタマイズ可能

ChatGPT Enterpriseは、企業ごとの特定のニーズに応じたカスタマイズが可能です。各企業の業務フローや用語に合わせて調整することで、より実用的で効果的なツールとして機能します。例えば、特定の業界用語や内部プロセスに基づいた応答を生成することで、業務の効率化を図ることができます。

  1. セキュリティとプライバシー

企業がAIを導入する際に最も重要視するのはデータのセキュリティとプライバシーです。ChatGPT Enterpriseは、最高水準のセキュリティ対策を施しており、データの機密性と安全性を確保します。また、プライバシー保護に関しても厳格な基準を満たしており、企業の重要な情報を安心して扱うことができます。これにより、企業は安心してAIを業務に取り入れることができます

これらの特徴により、ChatGPT Enterpriseは企業にとって強力なツールとなり、業務効率の向上、顧客対応の強化、そしてコスト削減に大きく寄与します。

ChatGPT Teamとの違い

以下の表から、ChatGPT Teamは、コスト面でも使用人数の制約面でもスタートアップや中小企業での導入に向いていることがわかります。また、Enterpriseはより高度なセキュリティと管理ツールが整備されているため、大企業向けです。

ChatGPT TeamChatGPT Enterprise
AIモデルの使用制限PlusよりはGPT-4、GPT-4oや DALL·E、ブラウジング、データ分析等のツールの使用制限低めGPT-4、GPT-4oや DALL·E、ブラウジング、データ分析等のツールの使用制限なし
セキュリティ自社での生成内容の学習機能はなしTeamに加えてSOC2、SAML SSOやドメイン認証あり
カスタム性チーム管理等の管理画面あり Teamより複雑な管理機能搭載
価格1ヶ月$25 / メンバー要相談
使用人数2人以上150人以上

参考文献:”ChatGPT Enterprise vs. ChatGPT Team: Which is the best for your business?” ZDNET

TeamとEnterpriseは、導入の仕方から人数制限まで大きく異なりますので、会社の規模や用途に合わせて、どちらのプランにするか選ぶことをおすすめいたします。

ChatGPT Enterprise の料金

ChatGPT Enterpriseの価格は導入企業によって異なります。そのため、具体的な価格は公式ホームページには掲載されておりません。OpenAIの営業部にコンタクトすることが必要となります。

ChatGPT Enterprise のメリット

  1. 業務効率化

Enterprise は、業務プロセスの自動化と効率化を実現します。例えば、日常的なタスクや定型的な問い合わせに対する対応を自動化することで、従業員はより重要な業務に集中することができます。これにより、時間とリソースの節約が可能となり、全体的な業務効率が大幅に向上します。

  1. 顧客対応の向上

Enterprise を活用することで、カスタマーサポートの質を向上させることができます。AIは24時間体制で顧客の問い合わせに迅速かつ的確に対応することができ、顧客満足度の向上に寄与します。また、顧客の問い合わせ履歴を分析し、個別対応の精度を高めることも可能です。これにより、顧客は一貫した高品質なサポートを受けることができます。

  1. コスト削減

業務の効率化と自動化によって、企業はコストを削減することができます。例えば、従業員が行っていた単純作業をAIに任せることで、人件費の削減が可能です。また、効率的な顧客対応によって、顧客離れを防ぎ、収益の安定化を図ることができます。さらに、AIの導入によって長期的には運用コストの低減が期待できるため、全体的な経営コストの削減にもつながります。

上記のように、Enterpriseの導入によって、人間を単純作業から解放し、より高度な仕事を与えることができます。そして、将来的には、人間と共にEnterpriseはビジネスの成長と発展をサポートします。

ChatGPT Enterpriseの導入事例

本セクションでは、3社におけるEnterpriseの導入事例を取り上げ、それにより挙げられた成果を紹介いたします。

ソフトバンクにおける導入事例

ソフトバンクでは、昨年の5月から全従業員2万人が利用できる安全なEnterpriseの環境を整備しております。同社の公式声明によると、Enterpriseをベースに開発した自社LLMは「ソフトバンクの全従業員が生成系AIをより積極的かつ安全・安心に業務で活用することを目的に、セキュアな環境で構築された社内向けAIサービス」とされています。また、具体的には、「文章の作成や翻訳などの既存業務の効率化や生産性の向上につなげることができる他、営業・マーケティング領域での企画・アイデアの立案やサービス開発における各種プログラミングのサポート、コールセンターの業務など、あらゆる業務に応用すること」を目指しているとのことです。

参考文献:ソフトバンク「ソフトバンク版AIチャットの利用を開始」

NECにおける導入事例

NECでは、昨年5月にOpen AIのLLMとNEC自社のLLMの両方を組み合わせた社内LLMを利用開始しております。社内業務において活用を始めた成果として、資料作成時間の50%削減、議事録作成時間の平均30分から約5分に短縮などが出ています。

また、NEC社内では、さらなる生成AI活用の推進を担う「NEC Generative AI変革オフィス」が中核となり社内のあらゆるシステムとの連携、サービスの高度化を進めています。社員へのプロンプト共有、Web教育、ワークショップやハッカソン開催などを通して、社員が自律的に生成AIを日常的かつ効果的に使い、圧倒的な生産性向上を実現することを目指します。

さらに、NEC社内のサイバーディフェンスでは、2023年4月末からChatGPT Enterpriseの活用を開始し、それによる攻撃診断・防御の両方の観点によるサイバー攻撃対策の高度化を目指しています。自社LLM導入によってセキュリティ面では、脆弱になるどころか強化されていることが示唆されております。

参考文献:NEC「NEC、コーポレート・トランスフォーメーション加速に向け生成AIを積極活用」

PwCにおける導入事例

PwCではグローバルにChatGPT Enterpriseを導入しております。10万人の社員がこのツールを利用しており、活用場面としては、税務申告書類の確認やソフトウェア開発、レポート作成などの業務の支援になるとのことです。活用事例は日々増え続けており、3000件以上の活用事例を自社内で確認できたという情報もあります。

参考文献:フォーブスジャパン「OpenAIとPwCが大型提携、米英で法人向けChatGPTの再販を委託」

上の3つの導入事例から、多くの大企業において、Enterpriseを活用する風潮になってきていることが感じられます。今後はさらに導入数が増えることが考えられるため、Enterpriseが日本全体における効率性を向上させる鍵になるかもしれません。

ChatGPT Enterprise の導入方法

  1. ニーズの特定 

まず、企業内でEnterpriseを使用する目的と具体的なニーズを特定します。どの業務プロセスを自動化したいのか、どのような効果を期待するのかを明確にすることが重要です。

  1. パートナーの選定

Enterpriseの導入に際して、信頼できるパートナーやベンダーを選定します。OpenAIの公式パートナーや認定ベンダーから導入支援を受けることで、スムーズな導入が可能です。認定ベンダーには、Microsoft Azure、Amazon Web Services (AWS)、Google Cloud Platform (GCP)、IBM、Accenture、Capgemini、PwCなどの会社が挙げられます。

パイロットテストの実施: 本格導入の前に、パイロットテストを実施します。限られた部門やプロジェクトでEnterpriseを試験運用し、効果や課題を評価します。

  1. フィードバックの収集と改善

パイロットテストの結果を基に、システムの改善や調整を行います。ユーザーからのフィードバックを収集し、必要なカスタマイズを行うことが重要です。

  1. 本格導入とトレーニング

改善が完了したら、本格導入を行います。従業員向けのトレーニングを実施し、AIツールの使い方や活用方法を周知徹底します。

  1. モニタリングとサポート 

導入後も、システムのパフォーマンスをモニタリングし、必要に応じてサポートを提供します。継続的な改善とメンテナンスを行うことで、最大限の効果を引き出します。

まとめ

この記事では、ChatGPT Enterpriseの概要、特徴、メリット、導入方法、他のAIツールとの比較、具体的な活用事例について詳しく説明しました。ChatGPT Enterpriseは高度な自然言語処理技術と強力なセキュリティ機能を備え、企業の特定のニーズに応じた高度なカスタマイズが可能であることが強みです。活用事例からも分かるように、業務効率化や顧客対応の向上に大きく貢献します。今後はカスタマイズと統合の強化、セキュリティ機能の向上、新機能の追加、グローバル展開の拡大が期待されており、企業の生産性向上と効率化をサポートするツールとして進化し続けるでしょう。

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この記事を書いた著者 林楽騏

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